不動産の境を例える用語として境界(きょうかい)と筆界(ひっかい)という言葉をご存知でしょうか。どちらの用語も一般的には同じ意味として使われる言葉ですが、掘り下げると少し違ってきます。
1.境界(きょうかい)とは
境界とは、土地所有権の範囲を画する線という意味で用いられます。
ただし、広義の意味では、筆界(後述)の意味も含まれた上で、この言葉が使われる場合もあります。
2.筆界(ひっかい)とは
不動産登記記録上の土地の境を示す言葉で、これを筆界と呼びます。公法上の線とも呼び、始まりは明治6年に行われた明治政府の地租改正事業に伴って、全国の私有地ごとに線を引いたことが始まりです。
極端に言ってしまえば、その明治時代に政府の引いた線が令和の現在にまで影響を及ぼしているということです。
※地租改正事業とは・・・明治政府が私有地に税金をかけるため、その土地を測量し、地番を割り振るためにそれぞれの所有地に境界線を定めました。この境界線の呼び名を原始筆界と言います。
ただし、この当時の測量も縄伸びといって、字のごとく縄を延ばして土地の広さを図ったものです。当然面積はブレブレでまともな面積とはなりません・・・。
3.まとめ(境界と筆界の大きな違い。)
境界は、土地の所有権をはっきりさせる境のことです。所有権というと小難しいですが、シンプルに例えれば、誰かと売買ことも自由ですし、ここから先はあなたの敷地ですと取り決めて、境界線を自由に動かすことも可能です。(ただし、境界は広義の意味で筆界を含めて呼ぶ場合もあります。)
筆界は、不動産登記記録に備え付けてある図面上の境が筆界になります。昔、明治政府が引いた線であり、地租(固定資産税)を管理するためのものです。よって、個人間の合意で線(筆界線)を動せるものではありません。
個人の合意で動かせるのが境界(私法上の線)で、個人の合意で動かないのが筆界(公法上の線)となります。
このことから境界と筆界は必ずしも合致していないことが多いですが、本来であれば合致していることが望ましいものです。なぜなら、売買をするにしても、銀行の担保にいれるにしても、それらの土地は不動産登記に基づいて取引されるものだからです。そして不動産登記記録の図面はあくまで筆界に基づき作成されているからです。
※仮に筆界の形を変えたい場合は
法務局に分筆や合筆といった申請手続きが必要となります。個人で手続きすることはもちろん可能ですが、手続きの為には測量が必要であったり、杭を埋設したりと、難解で時間もかかるため、専門家に任せるのが一般的なようです。