確定申告の時期には少し早いのですが、医療費控除というものを皆様ご存知でしょうか?
今回は身近な節税の知識として、医療費控除について簡単にご紹介します。
1.申告について
(1)確定申告とは
確定申告とは、自営業の方や、サラリーマンでも副業している方が「前年にこれだけ収入がありました。」と税務署に申告してもらい、所得税を納めてもらうための制度です。申告には期限があり、3月の中ごろまでに済ませなければなりません。
こういったことを聞いてしまうと、確定申告にネガティブな印象を持たれる方も多いかと思います。しかし、確定申告の際に、医療費控除を申告することによって、本来掛かる税金が安くなることもあります。
(2)還付申告とは
一般的なサラリーマンの場合は確定申告をする義務があるのでしょうか。
結論から言ってしまえば確定申告をする義務はありません。なぜなら、これから所得税を納める必要のある方が申告義務の対象であり、サラリーマンの場合は毎月の給与から所得税を差し引かれているのが一般的だからです。
では、サラリーマンの場合は払いすぎた所得税をどうやって取り戻したらいいか(これを還付と言います)。通常、多くのサラリーマンは年末調整という制度を利用して12月ごろの給与において所得税が還ってきているかと思います。
しかし、医療費の場合は12月を終えないと年額が確定出来ません。そこで、その12月の翌月1月以降に年額医療費を、税務署へ申告をすることで、所得税を還付してもらう手続きがあります。これを還付申告と言います。
2.医療費控除とは?
確定申告(還付申告)の際に年額医療費(前年中の1月1日~12月31日)を申告すると、所得税が本来掛かる税額よりも安くなるものです。
ここでのポイントはあくまで所得税が安くなるのであって(サラリーマンであれば払った所得税が戻ってくる)支払った医療費が還付されるわけではありませんのでご注意ください。
3.使える領収書は?
(1)原則、保険対象内の医療費であること
保険対象内の医療費であって、そこから自治体の医療扶助や生命保険等の支給額を除いて算出した年額の医療費が申告可能となります。
(2)医療費の対象者は誰なのか。
申告できる医療費の対象者はご本人に限りません。配偶者さまや子どもさま、あるいはご両親さまの医療費も控除として申告可能です。なお、こちらは同居でない場合であっても対象となります。ただし、金銭的に援助・仕送り(”生計を一にしている”と言います)をしている事実があるということです。
例えば、大学に通うために単身で暮らしている遠方の子どもさまがいて、親御さんが仕送りをしている場合であれば、遠方の子どもさまが支払った医療費も医療費控除として利用が可能となります。
※例外はありますので、不安であれば最寄りの税務署、もしくは税理士さんに確認してください。
必ずしも保険診療でなければ医療費控除が利用出来ないというわけではありません。例外もありますので注意が必要となります。
こちらも一例ですが、保険が効かない治療であって200万円(最新のがん治療で10割診療ということ)の医療費がかかった方がいらっしゃいました。ところが、後々専門家に確認したところ、どうやらその保険外の医療費でも、その治療のケースであれば例外的に確定申告の控除に使える事が判明したので、還付申告を受けられました(余談ですが、所得税の還付は元より、住民税が例年より遥かに安くすんだそうです。)
そのため、使えないつもりが使えたりといった実例も少なからずございますので、場合によっては専門家の判断を仰ぐ必要もあります。
4.計算方法について
年額の医療費(ご家族全て)が10万円を超えた部分が所得控除額となります。(10万円よりも少ない年額医療費で医療費控除を受けられる場合もあります。)
ここで誤解されがちなポイントがありますが、15万円の医療費がかかったとして、10万円を差し引いて5万円の金額がそのまま所得税として戻ってくるわけではありません。簡単に言うと、5万円に所得税率をかけた金額分が安くなりますので、所得税率(所得額によって税率は異なります)が10%なら5000円程度(本当はもう少し細かい計算になりますが)の還付額になります。
5.最後に
昔と違って今はオンラインで確定申告が出来るようになり、資料さえ揃えることができれば、あとは指定される金額を順番に入力していくだけで全て完結します。(これも例外はあります)
また、1月頃にはどこの書店でも確定申告特集の書籍が豊富にあります。もしも申告がわからないという方であっても、年額医療費が家族の分を含めて10万円を超える場合であれば、試しに申告に挑戦してみてはいかがでしょうか。